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[STEEL IS REAL] なぜ鋼を選ぶのか?

[STEEL IS REAL] なぜ鋼を選ぶのか?

こんにちは
テンプラサイクルのゴウです。

  

 

先日ブログに書いたBrother Cyclesの[THE ALLDAY]
乗ってみるとレーシーなポジションにも関わらず、名前のとおり一日中でも乗っていたくなる楽しい自転車です。
力を込めてペダルを踏むと、クロモリ鋼ならではの撓みと共にグイッと進む感覚や、パワフルなブレーキフィールとオンオフ問わず走れてしまうタイヤで道を逸れることもしばしば。
まだ近場で走っているだけなので、今度輪行して遠くのグラベルとかで乗ってみたい。

 さて、この度Brother Cyclesの[THE ALLDAY] と [KEPLER] 2台のクロモリ鋼製の自転車を所有することになり、あらためて感じたことがあります。それは、

 

Steel is real」

 

 いつからある言葉か、誰が最初に言った言葉か定かではありませんが、少なくとも2000年代半ばのSALSA Cyclesのステムの箱にこの言葉があるので、15年以上続く自転車界のマントラともいえる言葉。

 

 

 

日本語訳すると「鋼は本物」って感じでしょうか?
自分も10年ほど前に海外のWebサイトで見たときは、意味が分からず???ってなったことを覚えています。
鋼は本物なら偽物は何だろうかと。

 

自分が自転車業界に入ったのはBMXに乗っていたのが1つのキッカケですが、BMXも一部の完成車を除けばクロモリ鋼製で、BMXの次に手に入れたスポーツ自転車は競輪(NJS)のピスト。
ピストを降りてからも、クロモリ鋼製のロードバイクやマウンテンバイクに乗ることが多く、今までに乗ってきた自転車の中でも圧倒的にクロモリ鋼製の自転車が多く、今でこそカーボン製やチタン製の自転車にも乗りますが、自分が自転車へ傾倒したのはクロモリ鋼製自転車の存在がとても大きいと今は思ってます。
見た目の好みも多分にありますが、ガシガシ使える耐久性と手頃な価格がBMXやピストバイクに乗りまくっていた当時はとても恩恵がありました。

 

 

 

 
(21世紀ヴィンテージと呼ばれたCIELO、クロモリ鋼製の自転車の中でも屈指の乗り心地が良いフレーム)

 

話を「Steel is real」に戻しますが、Steel =鋼は1世紀以上の昔から自転車の材料として使われ、年を経るごとに性能を上げ、進化してきた素材でもあります。
そもそも鋼は、ざっくり言うと鉄にいろいろな素材を足したり引いたりして強度を上げた金属のこと。
50年ほど前にアルミニウムやカーボンなどの素材が自転車の材料となる以前は、ほぼ100%が鉄や鋼製自転車でした。
国内外の情報をインターネット越しに検索してみると、「Steel is real」たらしめるいくつかの要素があるようです。

 

鋼は強い

 他の金属素材に比べ、長期的な使用やオールラウンドな性能は鋼が優れています。
鋼はアルミニウムやチタンに比べ強度(使用による変形や破壊に強いこと)が高く、現在では様々な素材を添加した鋼が開発されており、耐久性重視で何十年もの使用に耐える重い鋼や、競技向けの軽量な鋼管や高剛性の鋼管も存在します。
耐久性のある鋼は手入れすれば一生使えるほど長寿命。
50年以上前の鋼製ロードバイクが今でも乗れる状態で存在するのは、他の金属では実現できない耐久性によるものです。
(もちろん適切に手入れされた状態に限ります)

 

 



(無垢のクロモリ鋼のパイプ、錆が出やすい状態ですが一番金属らしい見た目)

 

(ゴルフのシャフトメーカーとして有名なTrue Temper社、以前は自転車用の鋼管も作っていた) 

 

 

 「鋼は重い

他の自転車用材料と比べて、鋼は平均的に重い素材です。
その理由は鋼の密度が高いから。
鋼はアルミニウム合金の約3倍、チタン合金の約2倍の金属密度があります。
最後までチョコたっぷりのトッポくらい詰まっているのが鋼なので、当然重量は重くなります。
重いが故に、扱う人に自転車の現実を突きつけてくるのが鋼。
まさにSteel is real、鋼は現実的。
耐久性重視なら多少は目をつぶれますが、趣味や競技での使用となると、どうしても自転車を軽くしたくなりがち。
自転車沼にハマる導入としても、鋼製の自転車はある意味最適なのです。

 

 

(以前乗っていたCRUST、フレームがBMXにも使われる鋼管のため頑丈だがとても重い) 

 

 

鋼は乗り心地が良い

自転車はペダルを踏み込むと、車体が左右に捻れるような力がかかり、その捻れる力によってフレームが変形し、元の形に戻る感触を「ウィップ感」と表現することもあります。
鋼管、特にクロモリ鋼製のフレームは パイプ径やフレームワークで多少の差はありますが「ウィップ感」を感じやすい物が多い印象です。

高いパワーを出せるアスリートにとって「ウィップ感」があり過ぎても、自身のパワーを推進力に変え難いので別の素材が良いと思いますが、趣味で自転車を楽しむ人にとって「ウィップ感」は体にかかる負荷を軽減し、乗り心地の良さに繋がります。

 BMXからスポーツ自転車に入った自分は、最初に「クロモリ鋼の自転車は乗り心地が良い」と聞いたときは疑心暗鬼でしたが、いざ国内の某P社製クロモリロードバイクに乗ってみると、BMXと同じ材料を使ってるとは思えないほどしなやかな乗り心地に驚いたものです。

現在はアルミニウム製やカーボン製の自転車でも乗り心地が良いものもありますが、THE ALLDAYのような鋼ならではの細身で大きなダイヤモンド型フレームや、クロモリ鋼製のベンドフォークの撓みによる乗り心地は鋼製自転車ならではのモノがあります

 

 

(以前乗っていた国内P社製クロモリロードバイク、とても乗り心地が良かった)

 

(昨年の札幌〜東京ツーリングで使用したKEPLER、重い荷物を積んでも抜群の安定感) 

 

鋼は再興する

半世紀前は大多数だった鋼製自転車も、競技用自転車でのアルミニウムやチタン、カーボン製のフレームが台頭すると、ロードバイクやMTB、トラックバイクなどのレースシーンからは鋼製自転車は消えていきました。
現在、鋼管製の自転車は日本の競輪やBMXフリースタイルを除き、競技自転車の世界ではごく少数派です。
しかし、昨今のグラベルロードバイクの隆盛や、SNSなどでカスタムハンドメイドバイクのフレームビルダーの技術が知られるようになると、コアな自転車マニアだけでなく、一般の自転車乗りからもクロモリ鋼など鋼製自転車は選択肢の1つになりました。

細身のパイプを使ったフレームのスタイルや、乗り手に合わせた自転車の作り易さ、細かいディティールやパイプを曲げた造形、塗装の自由度など、多くの自転車乗りにとって「自分だけの理想の1台」を作ろうと思ったとき、価格以外に様々な選択肢があるのが鋼。
自転車のジャンルだけではなく、自転車に使い方も多様化した現在では昔ながらの乗り手に合わせたカスタムメイドの自転車も見直されてきています。

 

 



(フレームを製作するJ.D Cycle Techのジェームス、本当の”カスタム”を行う工房)

 

(昔見たフランス製のプジョー、50年くらい前のモデル)

 

(自分が10年以上前にオーダーしたIF、フレーム単体で1.4kgと軽量のクロモリフレームでした)

 

 

 自分が思う「Steel is real」とは時代や流行に流されず、永く自転車を使う秘訣だと思います。
他の素材の自転車に乗っていても、クロモリ鋼製自転車の乗り心地が恋しくなるくらい、鋼の自転車には普遍的な魅力があります。

 時代の流れと共に様々な選択肢が増え、自転車の使い方や楽しみ方も多様化しました。
その中であらためて鋼製自転車の耐久性や乗り心地、クラシックでスタイリッシュな見た目が評価されていることは、いち鋼製自転車愛好家として喜ばしいことであり、願わくば更に多くの方に「Steel is real」を伝えていけたら本望です。

 

 

 

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